20150429 レコード✕GW

卒業旅行は大学4年、3月の後半にひとりでNYへ行った。East Villageで日本人が経営するユースホステルみたいなところで7日くらい過ごした。中庭が鳩の糞とファストフードの包装紙のゴミでいっぱいで、シャワーがたまに水になる安宿だった。一人で行ったのは、ゼミが同じで仲良かった友人がある女の子に告白し、フラれた。そして知らないうちに冬の東欧に卒業(傷心)旅行へ行ってしまったから。「雪でどこも開いてないよ!!」とメールをくれた友人は、その女の子と一昨年の夏に結婚した。

 

CBGBの写真を撮ったり、グラウンドゼロで黙祷したり、映画のブエナビスタにあこがれてエンパイアステートビルに登ったほかは、滞在のほとんどをレコード屋で過ごした。NYUのそばのBleecker Bob's RecordsのBobと仲良くなり、ほぼ毎日訪ねていった。他のレコード屋や、蚤の市のレコードの山のなかからみつけた収穫を見せて、聴いたり、オススメのレコードを安く売ってくれたりもした。数週間ののちには社会人になる・・・という猶予期間の終わりの淵にいる感覚をBobに伝えられたかはわからないけど、いろんなことを話した。

 

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Bob

 

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グレイハウンドバスに乗ってボストンまで行ってMike Violaのライブをみて、ボストン市街のレコード屋(in your ear! など)をまわったりもした。NYに帰ってきてからPrinceton Record Exchangeに行って、黄色い袋が張り裂けそうなくらい買い込んだ。たしか円高で、ただでさえ日本に比べて安いレコードがさらにお手頃だったので貯金を使い果たしそうだった。とうぜん宿にはレコードの列ができていて、スーツケースの空きスペースは既に無くなっていた。ソウル、レアグルーヴ、60年代のロック、ソフトロック、ブラジルものが中心だった。

 

もうどうしようもなくなったので、郵便局で段ボールを買って、スーツケースに入らない分のレコードを船便で日本に送った。事情を説明し、税関でチェックされるinvoiceのレコードの価格を枚数✕1ドルにした。いまでも不思議なのは、レコード一枚一枚をどの店で買ったのかを覚えていること。これはレコード、CD好きな人ならわかると思うけど、エピソード記憶がその力を発揮する瞬間だと思う。

 

帰国して、仕事がはじまり数週間、軽く5月病みたいになりかけたGWにその段ボールが届いた。一枚ずつ確認しているうちに、いとおしくなり、うーみたいな変な声が出た。音楽好きな友人にレコードをみせると「べつにそれNYじゃ無くても日本であるんじゃね?」なんて言われたけど、その一枚はNYにしかなくて、いま自分の部屋にある。それが大事なんだけどなーと思ったが言わなかった。